NIWA鎌倉
NIWA KAMAKURA “和”の呼吸を宿す、
現代の庭
山本 晃輔 プロフィール
山本晃輔は、NIWA鎌倉の企画人として「和の本質」を現代に息づかせる空間づくりを手がける。建築・デザインの視点を基盤に、自然と人が調和する体験を設計。伝統文化を単なる形式ではなく、今を生きる感性として再構築することを使命とする。静けさの中に潜む美を探り、日常に“間”と“余白”の豊かさを取り戻すことをテーマに活動している。
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日本文化の“余白”を、どう継ぐか
鎌倉には、都市とは異なる時間が流れている。
竹林を抜ける風、石畳の湿り、鳥の声──それらが人の呼吸を静かに整える。
北鎌倉にある一棟貸しの宿
「NIWA鎌倉」は、その時間の流れの中に佇む。
ここを主宰するのは、写真スタジオの経営者でもあり空間プロデューサーでもある山本晃輔。
彼が目指したのは、“泊まる”という行為を超えた「関係の回復」である。
「建築やデザインの目的は、形を整えることではなく、人と人の関係を整えることだと思うんです。」
NIWA鎌倉は、文化を飾る場所ではない。
人が語り、火を囲み、自然と対話するための“装置”として設計されている。
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写真館から始まった
「関係のデザイン」山本の原点は、写真だった。
鎌倉と横須賀で「STUDIO HOME」を営み、十数年にわたり家族写真を撮り続けてきた。
七五三、成人式、結婚記念──そのすべての撮影に共通していたのは、
“記録”よりも“関係”を見つめるまなざしだった。
「写真の本質は、構図や技術ではなく、誰と一緒にいるかを意識すること。
その気づきが、家族の記憶を形にする。」
撮影の現場で、何度も聞いた「ここに泊まれたらいいのに」という言葉。
その一言が、山本の発想を転換させた。
写真という“瞬間の芸術”から、宿という“時間の芸術”へ。
NIWA鎌倉は、その延長線上に生まれた。
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NIWA鎌倉という場所
──自然と対話する建築北鎌倉の静かな谷筋。
小川のせせらぎが流れ、木々の枝が陽を受けて揺れる。
その地に建つ建物は、自然を背景ではなく前提として設計されている。
「この土地に立った瞬間、まず“風が通る”ことを感じました。
建物を建てる前に、空気の流れを考える。それが出発点でした。」
塗り壁や木組みは自然素材。
リビングからデッキ、庭、サウナまで、空間が地続きにつながっている。
内と外の境界は曖昧で、どの場所にいても風の通り道がある。
「作り込みすぎないこと。自然に寄り添いながら、人が無理なく過ごせること。
それが“日本の建築”の強さだと思います。」
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名の由来──
“NIWA”に込めた哲学「NIWA」という言葉には、古い日本語の記憶が宿っている。
古来、“にわ”とは神が降りる清らかな場所を意味した。
人が集い、語り、祈りを捧げる“間(あいだ)”の空間である。
「庭は、内と外を隔てる境界ではなく、人と自然のあいだをつなぐ場。
関係を結び直すためのフィールドなんです。」
名付けには妻の感性が深く関わっている。
インテリアや器、照明の選択まで、女性的なやわらかさが随所に反映されている。
“NIWA”という言葉に込めたのは、
“和(わ)”の響きと“日和(ひより)”の明るさ。
それは、暮らしの中で感じる穏やかな幸福の象徴でもある。
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火を囲む時間
──サウナと日本的コミュニ
ケーションNIWA鎌倉の中心にあるのは、火だ。
それはリビングのストーブであり、庭の焚き火であり、サウナの炉でもある。
「火を囲むと、人は自然に言葉を交わし始める。
サウナは“整う”ための装置ではなく、“語り合う”ための場所だと思っています。」
サウナのストーブは中央に配置され、座面の高さや照明の明るさまでが緻密に計算されている。
光と熱が均一に広がり、会話が自然に生まれる。
火を中心に輪ができ、そこにいる人たちの距離が少しずつ近づいていく。
古来、日本の家には囲炉裏があった。
それは調理の場であり、同時に共同体の中心でもあった。
NIWA鎌倉のサウナは、その現代的な再解釈と言える。
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食と風土
──“泳ぎ釣り”の一皿に込める
思想食の体験もまた、NIWA鎌倉の重要な要素である。
料理を手がけるのは、泳ぎ釣りを専門とする寿司職人。
自ら海に潜り、一本釣りで魚を仕留め、その日のうちに客へ届ける。
「大量仕入れではなく、その日その海で出会った一尾を出す。
食は、自然との対話から始まるんです。」
釣り上げた魚の鮮度や状態によって、調理法も変わる。
その即興性が、食を“作品”ではなく“関係の産物”に変える。
テーブルに並ぶのは、料理人の技だけでなく、自然と向き合った時間の蓄積である。
「“おいしい”よりも“ありがたい”が先に来る食事。
それが日本人の感性だと思うんです。」
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技と人
──“人となり”が空間をつくる滞在中にはヨガや整体などのプログラムも体験できる。
ただし、山本が重視するのは技術ではなく“人となり”だ。
「スキルがどれだけ高くても、心のあり方が整っていないと空間が濁る。
優しさや誠実さが、そのまま滞在の質に反映されます。」
これは日本文化の根底にある考え方と重なる。
“技”と“徳”は分離できない。
茶の湯における“和敬静寂”、武道の“心技体”──
人の内面と所作が一体となって初めて、美が成立する。
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海を越える“和”
──オーストラリアでの挑戦現在、山本は家族とともにオーストラリアへ拠点を移している。
目的は明確だ。
家族の幸福を中心に据えながら、日本の空間思想を異国で実践すること。
「家族と同じ時間を生きながら、“和”の空気を海外でどう翻訳できるか。
それを確かめてみたかった。」
素材も気候も異なる環境で、日本の感性をどう立ち上げるか。
それは簡単な挑戦ではない。
だが、敬意と対話を軸にすれば、文化の根はどこにでも根づく。
彼が目指すのは、“日本の形式”ではなく“日本的な態度”の再現だ。
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日本文化を“生きる”ということ
NIWA鎌倉の本質は、伝統の展示ではない。
文化を“生き方”として現代に再び呼吸させることにある。
「文化を伝えるのではなく、生きる。
呼吸のように続けることが、本当の継承だと思うんです。」
庭の風、木の香り、火の音。
そこにあるのは派手な演出ではなく、人と自然の関係を取り戻す静かな時間だ。
ここで体験するのは、滞在ではなく共鳴である。
“庭”という未来の形
「NIWA鎌倉」は、過去の日本文化を再現する場所ではない。
現代の暮らしの中で、人と自然、人と人の関係をつなぎ直すための実践の場である。
「庭は、人と自然のあいだに生まれる関係そのもの。
その“あいだ”を丁寧に扱うことが、日本文化の原点だと思います。」
庭とは、空間であり、時間であり、記憶でもある。
人が集い、語らい、また別れていく。
その循環の中に、文化は生き続ける。
NIWA鎌倉は、その循環を支える“静かな呼吸の場所”として、
日本文化の未来へ向けて確かな息づかいを続けている。
NIWA鎌倉NIWA KAMAKURA
鎌倉の静かな森に佇む、一日一組限定の“数寄屋と囲炉裏サウナの宿”。
330坪の広大な敷地に、露天の天然水風呂や洞窟を望む檜風呂、囲炉裏のあるサウナが点在する。
旬の鎌倉食材をプライベートシェフが手がける食事とともに、時の流れを忘れるような体験を。
自然と建築、心と身体がゆるやかに調和する空間で、“にわのよい一日”を過ごしてほしい。