織物・染色

2025.11.01

【奄美大島】金井工芸

奄美大島「泥染め」

泥染(どろぞめ)とは、鹿児島県の奄美大島に古くから伝わる伝統的な染色技法で、主に大島紬(おおしまつむぎ)の染色に用いられています。自然の力だけを使って染め上げる、世界的にも非常に珍しい染色方法です。

金井工芸の外観と工房内

木造の味わい深い建物が並ぶ金井工芸の外観からは、歴史と伝統を感じました。手作り感あふれる看板や、外に吊るされた装飾品も印象的で、職人の温かみが感じられます。

染色場の内部

工房内に入ると、大きな染色用の桶がいくつも並び、熟練の職人さんたちが手作業で染色を行っている様子が見られました。窓から差し込む自然光が、昔ながらの製法にマッチしていて、まるでタイムスリップしたかのような空間でした。

染め作業の実演

写真からは、職人の方が丁寧に布を染めている様子が伝わってきます。特に、染め液の中で布を揉みながら色を定着させる動作は、熟練の技を間近で見る貴重な体験でした。藍染とは異なり、奄美大島独自の「泥染め」は、植物(車輪梅)と鉄分を多く含む泥の化学反応によって深い茶褐色に染まるのが特徴です。

泥田と原材料

工房の裏手には泥染めに使われる泥田が広がっており、実際に泥に触れる体験もできました。泥は非常に鉄分が多く、肌に触れるとひんやりとして独特の感触がありました。職人さんからは、この泥が「泥染めの命」と教わりました。

染めた製品と仕上げ

乾燥場には、染め上げたばかりの藁のような繊維が干されており、均等に染まっている様子がよく分かりました。色合いは赤茶色で、自然な温かみが感じられる仕上がりです。

まとめ

金井工芸の泥染めは、自然の恵みと職人の手仕事が織りなす、唯一無二の伝統工芸です。植物染料と鉄分を含んだ泥によって生み出される深みのある色合いは、時間と手間を惜しまない丁寧な工程から生まれます。その風合いや質感は、機械では決して表現できないものであり、一点一点に職人の想いが込められています。泥染めの織物は、単なる布ではなく、自然と人の調和から生まれた美の結晶です。日々の暮らしの中で、そのぬくもりや落ち着いた色合いを感じながら楽しんでいただくことで、日本の伝統の豊かさを改めて実感できることでしょう。

(有)金井工芸
鹿児島県大島郡龍郷町戸口2205−1
https://kanaikougei.com/
https://www.instagram.com/kanaikogei/

Chief Brand Officer

Asari

大手コンサルタント企業勤務。その後フリーランス活動を経て、ビクウィースJAPAN(株)CBO就任(最高ブランド責任者)。当社では日本文化の取材・執筆、及びブランディングアドバイザリー活動を担う。女性ならではの観点からブランド創りのサポートを行い、日本文化伝承に尽力している。

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